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時空 解 さんの日記

 
2016
6月 18
(土)
22:52
「トウガラシの世界史」を読んで。
本文
みなさん、こんにちは。時空 解です。
今日は第三土曜日、読書会の日です。そこで課題本である「トウガラシの世界史」を読んだ感想を書いてみたいと思います。
この書籍、カスタマーレビューには現在五人のレビューがあり、全て五つ星(満星)が付けられていますが、うーむ…と考えてしまいます。と言うのも第一章:トウガラシの発見。第二章野生種から栽培種へ。この二つの章を読んでみて、その内容の理論ブレが気になったからです。ブレの例として、第一章は中南米に生息するトウガラシの種類を分類する方法について書かれているのですが、その分類方法の基準に "分布地と花粉稔性(カフンネンイセ)" を採用しているにも関わらず、同章の最後の方で鳥による種の散らばり(鳥に食され、フンによって種がいろいろに場所に分散する事)についての記述も出てきます。トウガラシの種類分けの説明が一通り終わった後にです。これは変ですね。分布地からトウガラシの種類分けを推論する時には "鳥による種の分散" を考慮せず、後付けで鳥による種の分散の可能性がサラリと書かれてあるのです。疑問を感じずにはいられません。
また、第二章では野生種と栽培種が分かれた理由に付いて "トウガラシの実の脱落性" を基に論じているのに、同章の最後の方で「トウガラシの収穫は、脱落したトウガラシの実を拾うのではなく、落ちる前に刈って収穫する事もある」などと記述されてたりします。考察の方法に反する事実がまた書かれています。
それにトウガラシが中南米からどのようなルートでインドに伝わったのか?と言うお話も書かれていますが、これも書籍の一つの章を使って簡素にまとめられている訳ではなく、書籍全体(三つの章)に渡って話題にしてきます。私には読みにくい印象を持ちました。結局インドにトウガラシを伝えたのはコロンブス(スペイン)ではなくバスコ・ダ・ガマ(ポルトガル)だと結論付けられていますが、この結論も独自の議論がされている訳ではありません、参考文献を信じての結論だと読み取れます。ちょっと残念です。
しかし、全体を通してみるとトウガラシに付いてこれほど豊富な情報が詰め込まれている書籍は他に類がないと思われます。トウガラシの書籍自体少ないとは思いまが…。とにかく、将来トウガラシの種類を遺伝子工学的に分析する際などには、この書籍が示す分類や伝搬ルートを土台にする事は十分に有益なだと思いました。著者、山本紀夫氏の人生の集大成とも言える書籍だと感じた次第です。
では今日はこの辺で。
 
独学協友会の動画は YouTube チャンネル でご覧になれます。
 

トウガラシの世界史 山本紀夫著

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