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時空 解 さんの日記

 
2021
9月 27
(月)
15:16
ファインマン物理学 "迷い歩き"
本文
皆さんこんにちは、時空 解です。

今日はファインマン物理学書 (以下 書籍 と記す) に載っている "迷い歩き" の節の、おもに数式にのところを整理してみましょう。
(YouTubeチャンネル にも "迷い歩き" を解説している動画がありますので、ご興味のあるかたは参照してみてください)
【ブラックショールズ方程式への道(1)】ランダムウォークとブラウン運動【確率微分方程式の基礎】 7分48秒~

この数日間、書籍の第1巻 第6章にある 6-3 の "迷い歩き" を数式として扱う解説に四苦八苦してきましたが、やっと自分なりの解釈が出来るようになったところです。稚拙な解釈かも知れませんし、まだまだ消化不良なのかも知れませんが、ともかくこれで次の段階に進む準備ができた心境です。

ご参考にして頂ければ幸いです。

では、まずは "迷い歩き" をどのように説明しているのか、書籍から抜き出してみます。
 
“迷い歩き" とは
$ x = 0 $ の点から出発して、前 ($ +x $ の方) か後 ($ -x $ の方) かへ一歩ずつ進むという規則で、そのどちらかということの選択は、例えば貨幣を投げるというようなことによって、無作為にきめられる。
まずは "迷い歩き" を上記のように定めています。
次に数式化するための準備説明として次のように書かれています。
 
この "迷い歩き" を実施する時に (彼の) 歩いた歩数を $ N $ で表す。
出発点からの距離を記号 $ D $ で表し、$ N $ 歩あるいた時の距離を $ D_N $ と表すことにする。
ここで彼が $ N $ 歩あるいたとすると "平均として原点 $ x = 0 $ から測ってどの距離にいるのか?" と言う問題がでてくる。
前にいくことも後にいくことも全く同等に起こりやすいのだから、彼の進みは平均としてゼロであると期待せねばならぬ。
しかし $ N $ が増すにつれて、出発点から遠くにさまよい来ているという方がよりもっともらしく思われる。
だから、平均として歩いた距離を絶対値であらわしたらいくらか、すなわち $ \left| D \right| $ の平均はどのくらいかということが問題になる。
しかし、他の測り方をして、距離の自乗で進みを測った方がむしろ便利である:運動が正であっても負であっても $ D^2 $ は正であるから、このような迷い歩きに対しては、この測り方の方が合理的である。
さて、今まではこの上記にでてくる $ \left| D \right| $ および $ D^2 $ がどうして出てくるのかが、どうにも腑に落ちなかったのですが…
数日間調べたり考えてみた結果、マイナス値をどう扱えば良いのか?と言う点から、 $ \left| D \right|、D^2 $ と言うやり方で "計算を試みた" のだろうと言う予想をいたしました。これは理論的に導いた $ \left| D \right|、D^2 $ ではなく
「 $ \left| D \right|、D^2 $ を想定して次の一歩のことを考えたらどうだろうか?」
と言う、いわば試みから出て来た $ \left| D \right|、D^2 $ なのでしょう。

"迷い歩き" に、まずはどうしてマイナスの値が出てくるのか? …と言うと、それは言わずもがな、原点 $ x = 0 $ を定めて、そこから前と後と言う2つの動きしかできない、と言う制約を設定しているからに他なりません。
"迷い歩き" を自然な形で考えるならば (彼は) 広場で $ 360 ^\circ $ どの方向へ踏み出しても構わないはずです。原点からどの方向にでも、ともかく $ 1 $ を踏み出す訳ですからね。ここで次の一歩が今の一歩と "同じ方向" ならば "+"、"逆方向" なら "-" と $ \mp $ が明確に出て来ますけどね。
ブラウン運動を考えるのならば、原点 $ x = 0 $ から3次元空間のどの方向に微粒子が初めに動くのかは予測不可能です。そしてその次もです。$ x = 0 $ から前 (+) と 後 (-) の2方向だけを考える制約なんてナンセンスですよね。

ここまで考えて、初めて私は
「ああ、もしかしたら後々のブラウン運動や広場での運動のことを考えて、強引かも知れないが $ \left| D \right|、D^2 $ を持ち出してきたのだなぁ」
と考えられるようになってきました。

これに気が付いてみると若い人たちからみたら
「時空 解さんは何に疑問を感じていたのだろう?」
と不思議だっかかも知れませんね。( ^^;
歳を取ると直交座標を4つの象限で表すことに慣れてしまって、前後とか左右をあくまでも $ \mp $ で考えてしまうんです。

でもね。始めに貨幣投げによる迷い歩きですからね。確率とか期待値に、そもそもマイナス値なんて聞き慣れない話です。"迷い歩き" で移動した距離とか、$ N $ 歩あるいた時の平均距離の "期待値" にそのままマイナス値を使っても変な話です。

こう考えると、 $ \left| D \right|、D^2 $ と言う想定の意味がよく分かってきたんです。それで書籍のこの後に続く "期待値" の説明がよく分かってきます。
 
$ {D_N}^2 $ の期待値はまさに歩数 $ N $ に等しいことを証明することができるのである。"期待値" というのは、$ N $ 歩あるくということを何遍も何遍もくりかえしたときに、期待される平均値の確からしい値 (我々のせいいっぱいの見積り) である。
期待値 $ {D_N}^2 $ が歩数 $ N $ に等しくなるなんて、こんなにシンプルな一致は他にありません。ここまでくると $ \left| D \right|、D^2 $ を想定してどのように "計算を試みる" と "期待値" が $ N $ に等しくなるのかが楽しみになりますよね。

ではさっそく続きを観て行きましょう。
 
期待値を $ \left< {D_n}^2 \right> $ によってあらわし "平均自乗距離" という。1歩だけあるけば、$ D^2 $ は必ず $ +1 $ であるから、 $ \left< {D_1}^2 \right> =1 $ である。(距離はすべて1歩を単位として測る。いちいち単位を書くことは省略する。)
$ N \gt 1 $ の場合 $ {D_N}^2 $ の期待値は、$ D_{N-1} $ から求められる。$ (N - 1) $ 歩あるいたとき $ D_{N-1} $ だったとすれば、$ N $ 歩あるいたときは $ D_N = D_{N-1} + 1 $ か、$ D_N = D_{N-1} - 1 $ かである。自乗すると

     $ {D_N}^2 = {D_{N-1}}^2 + 2D_{N-1} + 1 $、
           又 は
         $ {D_{N-1}}^2 - 2D_{N-1} + 1 $

である。$ N $ 歩あるくことを独立に何遍もくりかえせば、上式のそれぞれの値は半分ずつおこると考えられるから、平均の期待値は上の二つの値の平均である。したがって $ {D_N}^2 $ の期待値は、$ {D_{N-1}}^2 + 1 $ である。
一般に $ {D_{N-1}}^2 $ の "期待値" は $ \left< {D_{n-1}}^2 \right> $ である。(定義によって!)。したがって

     $ \left< {D_n}^2 \right> = \left< {D_{n-1}}^2 \right> +1 $
である。すでに示したように $ \left< {D_1}^2 \right> =1 $ である。したがって
     $ {D_N}^2 = N $
である。たいへん簡単な結果ではないか!

上に述べたのは距離の自乗であるが、迷い歩きで "原点からはなれた距離" をあらわすのに、距離そのもののような数の方がいいというならば、"ルート・ミーン・スクェアー距離 rms" $ D_{rms} $ を使う:
     $ D_{rms} = \sqrt{ \left< D^2 \right> } = \sqrt{ N } $

やれやれ、やっとここまで理解ができました。でもまだ $ \displaystyle \frac{ 1 }{ 3 } $ 程度なんですよね。書籍の "迷い歩き" を理解するまで、後  $ \displaystyle \frac{ 2 }{ 3 } $ です。

では今日も休日を始めています。休日の充実こそ、人生の充実です。また夜お会いできるよう、努力しています。

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