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時空 解 さんの日記

 
2015
9月 18
(金)
21:40
何十年かぶりで「ボッコちゃん」を読んで…。その3
本文

みんさん、こんにちは。
さて、明日は読書会です。前回の読書会はお盆休みと言う事もあり参加者が少なかったのが残念です。明日は参加者が多いと良いのですが。と言う事で今日も読書会の課題本、星新一さんの「ボッコちゃん」を読んでみました。残りの作品の感想を書いてみたいと思います。これで「ボッコちゃん」の全50作品の感想を書いた事になります。

<妖精>
人の弱さを妖精と言う素材を使ってうまく描き出している作品。星新一さんの作品は悪魔が出てくる作品もそうであるが、この手の作風のオチがずば抜けて面白い。この書式をまねして同じように作品を書こうとしても、なかなか書けるものでもない。この妖精が持つ能力や、その能力から人の心の弱さを引き出すストーリー展開・・・星新一さんの才能を見せ付けられる作品です。

<波状攻撃>
これは中学生や高校生に対して、詐欺がどんな手を使って人の気持ちに付け込んでくるのか、それを分かり易く説明できている作品だと思います。作品のオチに、詐欺にかかっていまう人の弱さを表現出来ている点において、秀作だと思います。この作品には価値がある。

<ある研究>
新しい事に取り組む時の研究者の心境、立場を簡素に表現出来ている作品だと思います。作品の中に出てくる発明品は、最後に具体的に出てくるが、それが明かされる前に周りの人々の様子を描写して、うまく発明品を明かす事をオチに仕上げてあります。この手法は今では良く使われる手法でしょう。星新一さんが登場する前から使われている手法でもあるでしょうが、ショート・ショート作品ほどこの手法が光りジャンルは、他に無いと思います。

<プレゼント>
この作品は、ボッコちゃんの中でも一番、作者さんにその意図を問いたい1作。オチの前までは「プレゼント」の意味の深さを考えさせられる話の流れであるが、最後にプレゼントを送り込んだ宇宙人の会話が、私にはどんでん返し?と言うよりもマンガのようなオチになっています。作者さんは「プレゼント」の深い意味を考えながらも、あえてオチをマンガのように軽くしたのか否か?それを聞いてみたくてしょうがない一作です。

<肩の上の秘書>
大人の世界を生きて行くと言う事がどんな気持ちか、そんな事をふと思ってしまう作品。作品の中に出てくるオウムは、社会生活の中の建前の象徴だと思われるが、最後のオチで主人公はその建前を当然のように受け入れ、建前と知っていて一日の仕事の疲れを、お店で癒やす。自分なら耐えられない気がするが、主人公のように割り切ってゆけばよいのだろうか?作品の中に出てくるようにオウムが本当に作れるような文明社会ならば、会社で波風立てずにそっと勤めていれば安泰な人生が送れる?そんな文明社会存在するのだろうか?存在しているとしても、それが幸せであるとはとても思えない。

<被害>
これはこれで面白い作品ですが、子供だましと言えば子供だましなオチですね。しかしこういったオチでも数十作、数百作と書けるのならば優れた事だと感じます。子供なら十分楽しめる。

<なぞめいた女>
この作品も子供だましの作品。オチはなかなかシャレが効いている気がしてよい。

<キツツキ計画>
この作品も子供だましの作品だと思えるが、なかなかうまく作品に仕上げられている。

<診断>
心の病を抱えたクランケの気持ちを垣間見る作品。中学生の時にこの作品を読んだ時は、「なんだこれ、オチが無いじゃないか」と思った記憶があります。しかし今読んでみるとちょっとゾッとする作品です。子供だましのオチが付いているよりもよっぽど良い作品に仕上がっていると思う。

<意気投合>
相手がどんな理由で、こちらに好意を持つのか?それは想像を超えている時が時々あります。この作品はその点を想像豊かに膨らませて書かれた作品です。この辺が星新一さんの才能あふれるところだと思います。

<程度の問題>
この作品はどんな気持ちで書き上げたのだろうか?きっといろいろと作品のアイデアを考えあぐね、迷いに迷っている自分の姿を作品に投影したのであろうと思われる作品。どんなショート・ショートを書かなくてはならない立場に立たされている作者の心境を垣間見たつもりになれる、私に取ってはとても味わい深い作品。

<愛用の時計>
ああ、これは小説家なら一度は書きたい内容の作品です。自分が愛している道具に対しての気持ちを表現する。自己満足以外の何物でもない気がしますが、自己満足を他人にも分かち合って貰えるようにストーリー付けをする、それは楽しい作業ですね。

<特許の品>
この作品は、中学の時にも衝撃を受けた作品。「特許の品」と言う題名ですが、そんな安易な題名ではもったいないと思える作品です。人間がどのような理由で努力するのか、中学生の時にそれを考えさせられました。もしかしらたこの作品が自分の努力する気持ち、と言うものに影響を与えているのかも知れない、と思えるほどの作品です。

<おみやげ>
この作品はズバリ、核爆弾反対を叫んだ作品です。星新一さんの作品にしてはとても珍しい作品です。時事の事を取り込んでいる作品は殆どありません。

<欲望の城>
いやはや、これは面白い作品です。欲望の城と言うのもいい。しかし主人公と欲望の城の中にいる人物2人の出会い方が少し気になります。この2人の出会い方にも最後のオチに見合う出会い方を描けていれば傑作でしょう。

<盗んだ書類>
中学生の時に読んで思えている作品の一つ。オチの切れがすばらしい。作品のどこにも無駄が無いように思います。

<ほごれている本>
これはどのように評価していいのか分からない作品。私には何とも言えない内容です。

<白い記憶>
さて、この作品はどのように評価していいのか迷います。この作品は主人公がお医者さんですが、このお医者さんは既婚者なのでしょう。主人公以外に登場するメインの人物は一組の若い夫婦です。その夫婦の夫と妻の様子を作品に仕上げてあります。私は結婚した事がないので作品をうまく味わう事が出来ません。

<冬きたりなば>
中学生の時に読んで「これは面白いなぁ」と思った作品の一つ。私が小学六年生の時に、既にスタートレックがテレビで放送されたということもあって、この手の作品は実感がありました。印象強く覚えているオチでもあります。

<なぞの少年>
これはも考えさせられる1作ですね。世の中のシステムは社会主義にしろ資本主義にしろ一長一短。それをちょっとした皮肉で簡素にショート・ショート作品に仕上げてあります。

<最後の地球人>
この作品は記憶に全くなかった。しかしとても意味深い作品。神が生まれる瞬間をオチに使ってある。この想像力こそがショート・ショート作品を生み出せる力なのだと思う。

みなさんは星新一さんの作品に対して、どのようにお感じになるでしょうか?
私は中学の時に夢中になって読みましたが、そのせいか小説のエッセンス?とでも言う物を一通り読んでしまった感を持っています。長い小説のストーリーを要約してみると、結構、星新一さんのこれこれの作品に流れに似ているなぁとか、これなら星新一さんのオチの方が切れがいいなぁとか、そんな事を考えてしまうようになって、普通の小説を楽しめなくなってしまった感があります。それほどに星新一さんの作品はバラエティーに富んでいて、ストーリー展開が面白くて、しかも内容も深い物があります。
ま、そんな事を理由に、学生時代は小説を読む、と言う勉強をサボる理由にしたりしていましたね。ともかく星新一さんのショート・ショート作品。1001作もあるのだから凄いですよね。
では今日はこの辺で。明日の読書会が楽しみです。


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